2019/04/03
講演録
2011年3月11日の東日本大震災で、福島第一原子力発電所と同様に地震・津波の被害を受けながらも、炉心損傷に至ることなく全号機の冷温停止を達成した福島第二原子力発電所。現場指揮に当たったのが、当時所長だった増田尚宏氏だ(現日本原燃株式会社 社長)。危機的な状況の中でも落ち着いて的確に現場をまとめあげたリーダーシップは海外でも評価され、ハーバード・ビジネス・スクールの授業でも取り上げられているという。その増田氏が当時を振り返った。
「緊急時を乗り切るためにやったこと」を最後にもう一度振り返ってみたいと思います。
■スタッフの安全を守ることを最優先
まず、地震後は、安全を確保した上で、危険な場所をしっかりと皆に分かるようにしたということ。
しかし、福島第一が爆発した後は、皆、状況が分からないんですね。原子力のプロばかりではないですし、そもそも自分たちが安全なのかどうかも分からない中で仕事をしているわけです。私自身も爆発経験なんてないので分からないのですが、「絶対、皆を危険にはさらさない、皆を守る」ということを常に第一に考えました。
危険をはらむ業務は、私が手順書を作っています。特に、水素ガスボンベがいっぱい倒れ、水素が漏れているという警報も出ていたのですが、水素ガスボンベを扱ったことがないし、何が危険かも分からないので、それをクリアするために、水素ガスを扱っている会社、4~5社に電話をして、何に気を付ければいいかを聞き取りながら手順書を作りました。そんな責任のあることを誰かに考えさせるわけにいかないので、私自らが行いました。
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